セラ様二次創作1-3

セラ様二次創作-作:◆69qW4CN98k ■7.09kb


#3


ロリババァは無敵也
老いることもなく、死ぬこともない
女の可愛さと熟女の知識を兼ね備える究極生物
美しさを基本形とするその存在に、誰もかなうはずがない
だが―――

人の身でありながら、その存在へと近づこうとする少女がいた
その少女の名は、世田 春菜
これはその少女のちいさな恋の物語―――



会場内に入ると、甘い匂いが春菜の鼻をくすぐった。
ところどころに備え付けてある丸テーブルには客たちが談笑しており、
奥に見える長テーブルでは係員達が矢継ぎ早にケーキと飲み物をそろえていた。
どうやらあそこから取ってきて食べるバイキング方式らしい。

「ささセラ様は座って座って、自分が取って来ますよ。何かリクエストはありますか?」
「う、うむ。まあ特にはないな、適当に頼むぞ」

了解、と尻に火がついた餓鬼のように彼は駆けていく。
残された春菜はキョロキョロと辺りを見回した。
こういう催し物だけあって若いカップルが多く見うけられる。
人目もはばからずに、彼氏が彼女へと食べさせている輩もいる。
自分たちも周りから、そういうカップルに見られているのだろうか。
それとも、仲の良い兄妹と思われているのだろうか。

(羨ましいな……)

彼氏が差し出したケーキを頬張る女性の姿を見て、春菜はそう思った。
そんな春菜のもとへ彼が戻ってくる。

「お待たせしましたセラ様!」

そういって向かい側に座る。
持ってきた皿には各種さまざまなケーキが盛り付けられていた。
皿のふちぎりぎりまで盛り付けられているそれを見て、春菜は呆れる。

「お前……こういうのは少しずつ持ってくるものだぞ。はしたないと思わんのか」
「え? まあいいじゃないですか! だってセラ様に食べて欲しいから!」

彼は満面の笑みでそう答えた。
やれやれと春菜は嘆息する。悪気がないから余計たちが悪い。

(……そうだ)

春菜は先ほどの光景を思い出した。
うまくいけば彼も同じ事をやってくれるかもしれない。
この好機を逃せばキャッキャウフフな展開はいつになる事だろう。
春菜はバクバクと高鳴る心臓を抑える。
今だけ、ここだけ、貴方だけ。やるしかない。
平静を装い、しれっとした顔で春菜は彼を見つめた。

「ふん、まあ良いわ。それでは貴様、さっさとそれを私によこさんか」

あ、はいと小皿に取り分けようとする彼の手をピシャリと叩く。

「あいた!」
「タワケが。知恵の足りない下僕はケーキを持ってきて終わりか」
「と……いいますと?」



キョトンとした表情をする彼に、春菜は咳払いをして睨んだ。

「私の手を煩わせるな。貴様が取り分けて食べさせろという事だ馬鹿め」
「……! こ、これは気付きませんでしたセラ様! 大変申し訳ありませんでした!」

雷に打たれたかのように彼は恐縮し、いそいそとナイフでケーキを切り分ける。
一口サイズへと分けられたそれをフォークで捧げ持ち、彼は恭しく春菜へ差し出す。

「ささ、セラ様。どうぞ」
「うむ」

ケーキを食べた春菜の口中に、甘い世界が広がっていく。
チョコでコーティングしたスポンジから生クリームが溢れだしてくる。
咀嚼する度にそれらは混ぜ合い、昇華し、舌を蕩かさんとする。
続けて食すと、今度はチーズケーキの芳醇な香りとシナモンのスパイスが口中を攻めてきた。
先ほどの甘味を打ち消して、更なる美味を引き立たせる。
少々練り込んである蜂蜜が実に心地良い。
次は品を変えて、シュークリームを頬張る。
柔らかい生地を齧るとバターの味がした。あともう一つ。
舌先に何か引っ掛かる物が有った。
どうやらナッツの類を一緒に練りこんでいるらしい。
甘味と香ばしさが力を合わせて脳まで駆け巡ってきたような、そんな感じを覚えた。

「いかがでしょうか」
「美味である」

素っ気無く答えた春菜の返事に彼は破顔した。

「あ、ありがとうございます!」

そんな彼へと構わずに春菜は食事を続ける。どれもこれも美味しい。
一番を決めろと問われれば、三日三晩は考えなければいけないだろう。
ふと、気になって春菜は尋ねてみた。

「高かったのではないか?」
「何がですか?」
「ここの会場の事だ。バイキングとは言ってもケーキひとつひとつが出来ておる。
 おそらく人気もあるはずだ。チケットとか値が張ったのではないか?」
「あ、ああ、それですか」

へへ、と頭に手をやって彼ははにかんだ。

「まあよくある、先着何名様ご招待のそういったイベントなんですが。
 セラ様はそんな事は気にしなさらないでささ、どうぞ召し上がってください」
「ふむ」

春菜は記憶の糸を手繰ってみた。そういえば彼のバイトが多い時期がある。
その時は時間が減ったのを少々悲しんだが、こういう事ならば合点がいく。
春菜はケーキを一皿取り分けて、彼へと置く。

「お前も食え」
「は?」
「嫌か?」

ケーキにフォークを突き刺し、一口サイズに取って男に突き出す。

「それとも、私のケーキは食えないと申すか?」



肩肘をついて微笑む春菜の姿に一瞬呆気に取られた彼であったが、すぐに返事をする。

「は、はい! いただかせて頂きます!」
「うむ。ほれ、あ~ん」
「WRYYYYYY!」

吸血鬼が喉下に牙を突き刺すような大口をあけて、彼はケーキに喰らいついた。
もしゃりもしゃりと、噛みしめ味わう。

「どうだ」
「美味でございます!」

ふふ、と春菜は彼の無邪気な笑顔をみて、また微笑んだ。

「お集まりの皆様、本日は○○○社の秋の味覚フェアに御越し頂き誠にありがとうございます」

歓談を楽しんでいる会場に、係員のアナウンスが響いた。
春菜と彼も、食事をしながら耳を傾ける。

「皆様大変に楽しまれておられるとは思いますが、今日はひとつ、イベントを用意いたしました」

係員が皆の注目を受けると、片手をあげて会場の一方を指す。
そこには一段高い場所に置かれたテーブル群があった。
各テーブルの側には係員が控え、ケーキが並んだ皿を掲げている。

「すでに当社のケーキをご賞味とは思いますが、本日はもうひとつのイベント、
 『ワンダフル!? ケーキバイキング』!
 ペアでいったいどれだけケーキを食べられるのか!? わんこ蕎麦ならぬわんこケーキ!
 参加料などは頂きません、ここにお集まりの皆様なら誰でもOK!
 どうぞ今日の思い出に、参加してみてはいかがでしょうか!?」

アナウンスの声に合わせ、他の係員が一斉に拍手した。
ざわざわと、あちらこちらで話し合う声がする。

「ふむ、早食いとな」
「みたいですね、セラ様。出ますか」
「馬鹿をいうな」

フォークを皿に置き呆れた顔で春菜はいった。

「すでにケーキはたらふく頂いた。食べようと思っても入らぬわ」

おそらくそれを見越してのイベントなのだろう。
他の客を見ると、同様の声がちらほらと聞こえる。
そんな観客を促すように、係員は続けた。

「なお、上位の方々には粗品をご用意しています! 是非是非ご参加を!」

「粗品ですって、セラ様」
「粗品? 粗品如きでこのセラが動くとでも? ……はしたない」

じゃあ、と彼がいきなり春菜の手を握った。
不意をつかれた春菜は一瞬ドキンとする。

「俺が全部食べますから、一緒に出ましょう! そして一位になりましょう!
 勝利の栄光を、君に!」

そういって彼が笑う。無邪気な行動。無邪気な言葉。
年上なのに、どちらが子供なのかわからない。



(……でも)

春菜は、そんな彼が好きになったのだ。
普段は彼の想い描く人物を気取ってはいるが、頼まれれば嫌とは思わない。
彼が喜ぶが好きだ。彼の側にいるのが好きだ。彼の全てが好きだ。
それならば、どうして断ることができようか。
内心の動揺を抑え、顔に出ないように取り繕い、春菜は答えた。

「……ふ、ふん、馬鹿馬鹿しい。本来ならばこのような戯れ事に付き合ってはおられぬが、
 今日の私は気分が良い。我ながら甘いが許してやろう、見逃してやる」
「……と、いいますと?」
「一緒に参加してやると言っておるのだ、馬鹿め」
「ほんとですか!」

あまりのはしゃぎ様に春菜は苦笑した。
やれやれといった仕草で椅子にうつかかり、イベントの場所をみやる。

「そのかわり、ちゃんと勝てよ? お前が頑張るといったんだからな?」
「勿論ですとも! ではいきますか」
「お、おい」

ぐいと引っ張って、彼は係員へと走っていく。
よほど春菜に尽くせるのが嬉しいのだろう。
彼は嬉々とした表情を崩してはいなかった。
そして、後ろを振り返ればわかっただろう。
セラ―――世田 春菜も彼と同じ様に破顔していたことを。



次回 「 食うか喰われるか ケーキバイキング 」
to be continued……



  • 最終更新:2011-05-16 23:03:57

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